このページができたのは:2018年5月6日



<ちいさいページ 17>

キスミレ オオバキスミレ

阿蘇でキスミレを見てきました

2018年5月6日



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このページで,上付きの数字や文字を付けたところは,ページの最後にまとめて示した本やウェブサイトからの引用です。


新潟の草山を歩いていて黄色いスミレが咲いていれば,それはオオバキスミレのようなのですが,オオバ,つまり「大きな葉っぱの」と断らなくてもよいキスミレというのも,きっと,どこかに咲いているのだろうと思っていました。

新潟の黄色いスミレがオオバキスミレだろうという考えは,手元にある写真集(新潟県野草図鑑1))に載っている黄色いスミレがオオバキスミレだけだったからという,かなり頼りないものだったのですが,生来のいい加減さで,それより詳しいことを調べてみることはありませんでした。

少しまえ(4月の中ごろ)に九州を旅行したのですが,そのときに見た黄色いスミレが,どうやら,「大きな葉っぱの」と断らなくてもよいキスミレのようでした。オオバキスミレの葉っぱが花よりもずっと大きかったことを思いだし,こちらの葉っぱが花の大きさとあまりちがわないのを見て,「オオバではない!」という直感(というほど大袈裟なことでもないのですが)になりました。そのスミレが咲いていたところ(阿蘇の大観峰)も,あとで調べてみると,キスミレの分布域に入っているようでした。

この箱のなかには,花と葉っぱの大きさを比べることができそうな写真を貼りました。どちらの「キスミレ」も,花の大きさがあまりちがわないような気がしましたので,花の大きさとの関係で,オオバかどうかを見分けようという考えです。

キスミレ
2018年4月16日
大観峰/阿蘇山(熊本県阿蘇市)

オオバキスミレ
2007年4月30日
丸山(新潟県小千谷市)
花の大きさは,どちらの「キスミレ」も,側弁のはしからはしで3センチくらいですので,それと比べると,葉っぱの長さはキスミレで2-3センチ;オオバキスミレで5センチくらいになりそうです。オオバキスミレの葉っぱの大きさは「葉身の長さ5~10 cm」6)のように説明されていましたので,5センチというのは,ちょっと小ぶりなようですが,それらしい大きさだということになりそうです。

ふたつの「キスミレ」の葉っぱを比べて,小さいほうをキスミレ,大きいほうをオオバキスミレと見たてるのも,なかなか素朴でよいと思うのですが,ふたつの「キスミレ」の特徴をもう少し詳しく較べて,阿蘇のキスミレが「オオバ」ではないことを確かめてみたくなりました。

ふたつの「キスミレ」にちがいがあるのは萼の形で,図鑑8)のキスミレのところには:

がくに1 mm内外の付属体があることでオオバキスミレと区別できる。

のように,また,図鑑6)では,キスミレのところに:

オオバキスミレとは〔中略〕がく片の付属体がわずか1 mm内外ではあるがはっきりと存在することで区別する。

のように説明され,オオバキスミレのところには:

がく片は狭披針形で附属体はほとんどない。

のように説明されていました。

このような違いがあることは,写真を撮っているときにはまったく頭になかったのですが,なんとも運のよいことに,付属体が「ある」か「(ほとんど)ない」かが分かるような写真が撮れていました - それらしいところを切りだしてみたのが,下の2枚の写真です。

付属体というのは,萼片の元のほうから伸びている角のようなものらしく,キスミレの萼には確かに付いていますし,オオバキスミレ(の蕾)の萼には,わずかに膨らんでいるだけで,あるともないともいえないように見えました。

キスミレ

オオバキスミレ
もうひとつのちがいは,キスミレの花弁の外側(裏側,背面,背軸側)の色で(人によって表現は少しちがうのですが):

花弁の外側には濃い赤紫色のぼかしがある6)8)
花弁の背面は紫色を帯びる9)

ということですが,それに対して,オオバキスミレについては,どの図鑑6)8)9)にも,これといった説明がありませんので,背面もやっぱり黄色いのだろうという考えになりました。

このような違いも,これもまったくのまぐれ当たりですが,上の2枚の写真に撮れているような気がします。キスミレのほうは開いた花が写っていますので,花弁の裏側にある「赤紫色のぼかし」が分かりますし,オオバキスミレのほうは蕾しか写っていないのですが,蕾の表面には花弁の裏側が見えているはずですので,蕾が黄色く見えていれば,花弁の裏側も黄色いということになりそうです。

せっかくキスミレを見たのだからということで,キスミレオオバキスミレの特徴を拾いあつめてみると,下のような表ができました。
キスミレ
オオバキスミレ
国内の分布
静岡,山梨県と中国山地や九州の一部に不連続に分布6)
静岡県,中国山地の一部および九州(北部と中部)に不連続に分布8)
近畿地方以北の本州と北海道6)
本州(主に日本海側),北海道に広く分布し,本州北,中部の日本海側に最も多い8)
生育環境
日当たりのよい山地6)
低山帯上部から亜高山帯の,湿気の多い草地や林の縁6)
高さ 10~15 cm6)8) 15~30 cm6)8)
葉身 長さ5~10 cm6)
花弁 外側に濃い赤紫色のぼかしがある。6)8)
側弁と唇弁には内側に紫のすじがある。8)
側弁の内側には毛があり8)
花弁は長さ1~1.5 cmで側弁に毛がある。6)
唇弁と側弁には紫のすじがあり,〔中略〕側弁の内側には毛がある。8)

がくに1 mm内外の付属体があることでオオバキスミレと区別することができる。6)
萼片は狭披針形で附属体はほとんどない。8)
学名 Viola orientalis (Maxim.) W.Becker6)W)
Viola brevistipulata (Franch. & Sav.) W.BeckerW)
キスミレとオオバキスミレという名前をならべると,オオバキスミレがキスミレの変種とか亜種のように思えてしまうのですが,種小名がorientalis(東方の)とbrevistipulata(短い托葉のある)のように違っていますので,種のレベルでちがうということになる(変種とか亜種ということではない)ようです。

ウェブの百科事典W)のオオバキスミレのページを見ても:

フランスのフランシェとサバチェが白山で採取したものを基準標本とし,Viola pubescens var. brevistipulataと命名したが,1916年にドイツのベッカーにより独立種Viola brevistipulataとされた。

のように説明されていました。ちなみに,Viola pubescensというのは,北アメリカに自生するスミレ(英語名は downy yellow violet)W)だということです。

ひと口にオオバキスミレといっても,私が(新潟の草山,ヤブ山で)見なれているのは:

Viola brevistipulata (Franch. & Sav.) W.Becker subsp. brevistipulata

という亜種(学名上の基準亜種9))ということになるようです - ということは,オオバキスミレという標準和名は,種の名前でもあり,亜種の名前でもあるということになるのでしょうか(標準和名と学名をまぜこぜにして考えても,たいした意味はなさそうですが)。

Viola brevistipulata (Franch. & Sav.) W.Becker(という種)には:

関東以北や東北地方の高山には〔中略〕ナエバキスミレ
中国地方の高所にはダイセンキスミレ
北海道日高にはエゾキスミレ

のような亜種や変種がある9)そうです。

それぞれの学名についても調べはじめたのですが,参考にした資料によってちがいがあって(たぶん,資料の新旧の影響だろうと思うのですが),なにがナニやら分からなくなってしまいました - そちらについては,改めて勉強することにしようと思います。



1) 山本敏夫: 新潟県野草図鑑<Ⅰ>,新潟日報事業社,321pp., 1998(改装版第2刷)
2) 山本敏夫: 新潟県野草図鑑<Ⅱ>,新潟日報事業社,307pp., 1998(改装版第2刷)
3) 山本敏夫: 新潟県樹木図鑑,新潟日報事業社,302pp., 1999(改装版第2刷)
4) 清水建美: 図説 植物用語事典,八坂書房,323pp., 2010(初版第6刷)
5) 牧野富太郎(原著),大橋広好・他(編): 新牧野日本植物圖鑑,北隆館,1458pp., 2008. 11
6) 牧野富太郎(原著),邑田 仁・米倉浩司(編): APG原色牧野植物大図鑑,北隆館,Ⅰ〔ソテツ科~バラ科〕,11+647pp., 2012. 4; Ⅱ〔グミ科~セリ科〕,11+887pp., 2013. 3
7) 大橋広好・他4(編): 改訂新版 日本の野生植物,平凡社,1: 391+図版 272pp., 2015. 12; 2: 381pp.+図版 256pp., 2016. 9; 3: 338pp+図版264pp., 338pp. +図版 264pp.; 4: 348+図版 256pp., 2017. 3
8) 牧野富太郎(原著),邑田 仁・米倉浩司(編): 新分類牧野植物大図鑑,北隆館,1627pp., 2017. 6
9) 高橋秀男(監修): 野草大図鑑,北隆館,727pp., 1990. 4
W) Wikipedia (https://ja.wikipedia.org/wiki/)

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